第35章

さんざん呼んでも、返事はない。

物音を聞きつけた家政婦が、あわててキッチンから駆け出してきた。うやうやしく頭を下げる。

「お嬢様、お帰りなさいませ」

「新谷卿華は? どこへ行ったの」

立花馨はサングラスを外し、いら立たしげに眉をひそめた。

「奥様は……もう何日もお戻りになっておりません」

家政婦はおそるおそる答える。

「何日も帰ってないですって?」

立花馨は声をつり上げ、鼻で笑った。

「専業主婦のくせに、家にもいないでどこをほっつき歩いてるのよ。ほんと、いい度胸してるわね。うち立花家のお金で暮らしておいて、食事ひとつ作らないなんて」

言えば言うほど腹が立つ。立花馨はスマホ...

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