第36章

立花馨は目にも鮮やかなシャネルのセットアップに身を包み、手には見覚えのありすぎる保温容器を提げていた。――それは、新谷卿華が三十分前、別荘のキッチンで腹の痛みをこらえながら祖母のために作った海鮮麺の入ったもの。

須藤郁夜は病衣のまま、立花真淵のダークカラーのスーツジャケットを肩に掛け、親しげに立花馨の腕へ絡みついている。何かを囁いたのだろう、立花馨が手で口元を隠して、くすくすと甘く笑った。

その隣に立つのは立花真淵だ。背筋の通った立ち姿、彫りの深い横顔は冷ややかなのに、須藤郁夜を見下ろす視線だけは、滅多に見せない柔らかさと、甘やかすような色を帯びている。

遠目には三人が楽しげに笑い合い...

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