第38章

立花真淵は眉間に深い皺を刻み、通話ボタンを押した。

今度の須藤郁夜の声は、はっきりと泣き声を含んでいた。慌てた息づかいまで混じっている。

「真淵、早く帰ってきて……さっき階段降りてるときに、うっかり転んじゃって。足首がすごく腫れてて、わ、私……」

「すぐ行く」

立花真淵は路肩に車を寄せて停めた。

振り返って新谷卿華を見る。複雑な目。迷いが一瞬だけ揺らいだが、結局、冷たく言い放つ。

「病院のほうでちょっと用ができた。行かないといけない」

新谷卿華は彼を見返し、口元に極上の嘲笑を浮かべた。

「立花社長、ご自由に」

そう言うや否や、彼女は迷いなくドアを開けた。初秋の刺すような冷た...

ログインして続きを読む