第42章

リビングに残ったのは、新谷卿華と須藤柚だけだった。

空気が、すっと冷える。

須藤柚は湯気の立つ湯呑みに手を伸ばし、ゆっくりひと口すすってから、淡々と切り出した。

「卿華。あなたが立花家に嫁いで三年。私は自分なりに、あなたに不自由はさせてこなかったつもりよ」

新谷卿華は静かに座ったまま、返事をしない。

その伏し目がちな従順さが、須藤柚の眉間の皺をさらに深くした。

彼女は、新谷卿華のこういうところがいちばん苦手だった。

いつだって穏やかで、いつだって黙っていて――まるで何か理不尽な目に遭っているみたいな顔をして、それでも何も言わない。

そのくせ、お婆さんはそういう「健気さ」が大層...

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