第47章

彼女の声はひどく小さかった。風がひと吹きすれば消えてしまいそうなほど。なのに、すべてを諦めきったあとの冷えきった静けさだけが、はっきり滲んでいる。

「立花社長のもの……汚してしまいました」

それきり、彼女は彼を見もしない。黙って身を引き、部屋の隅に置かれた一人掛けのソファへ戻っていく。狭い座面に身を縮め、うつむいたまま微動だにしない。――命の抜けた置き物みたいに。

立花真淵は、その場で固まった。

一瞬で翳った彼女の眼。怯えたハリネズミみたいに、自分をきつく丸めて守る姿。胸の奥がぎゅっと潰され、見えない手に心臓を握り締められたように息が詰まる。

口を開き、何か言おうとした。

嫌悪し...

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