第48章

金糸の眼鏡を鼻梁の上で押し上げ、視線をドレスから新谷卿華へ移す。やや血の気の引いた顔色だというのに、隠しようのない光がある。レンズの奥の眼差しに、露骨なほどの驚嘆と、そして惜しむ気配が走った。

「……間違いなく、天才の仕事です」

金田川浬は穏やかな声で言いながら、どこか悔やむように目尻を落とす。

「こんな才能が、形だけの結婚に三年も埋もれていたなんて。あなたはもっと早く、ここにいるべきだった。立花家の台所じゃなくてね」

「結婚」という単語にも、新谷卿華の表情は揺れない。机の上の冷めたコーヒーを持ち上げ、ひと口だけ含む。声は驚くほど平坦だった。

「昔の私は、ただの馬鹿でした。もう二度...

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