第60章

数日後、新谷卿華の体調はかなり回復し、各種数値も退院の基準を満たしていた。

退院手続きを済ませたその日の午前。羽田糸は早くから車で病棟の前に待機していた。

新谷卿華はドアを開けて助手席へ滑り込み、シートベルトを締めながら、いつもの癖で予定を組み立てる。

「とりあえずスタジオに寄ろう。秋のオートクチュール、あのパターン図……あと少しだけ詰めたいの」

「寄るわけないでしょ!」

羽田糸はアクセルを踏み込み、ハンドルを切って容赦なく言葉を遮った。

「そのボロボロの身体でこれ以上無理したら、本当に終わる。今日迎えに来たのは、あんたに仕事させるためじゃない。命がけの根性論、やめて」

新谷卿...

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