第69章

夕方六時半。配車アプリで呼んだ車が、青山別荘の黒い唐草模様のアイアンゲートの前に、すっと停まった。

新谷卿華はドアを押し開け、外へ降りる。

初秋の夜風がひやりと頬を撫で、羽織った生成りのトレンチの裾を揺らした。

深く息を吸い込み、門のテンキーに暗証番号を打ち込む。

屋敷の中はしんと静まり返っていた。新谷卿華は一階に留まらず、まっすぐ無垢材の階段を上がり、二階の書斎へ向かう。

バッグの奥を探り、予備の小さな鍵を取り出した。しゃがみ込み、書机のいちばん下の引き出しの鍵穴へ差し込む。

「カチッ」

小さな音とともに、引き出しが開いた。

中には、分厚い黒の本革張りの見本帳が、埃ひとつな...

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