第70章

新谷卿華は布団をはねのけ、裸足のままひんやりした木の床に降りた。灯りはつけない。窓の外から差し込むかすかな月明かりだけを頼りに、そっと客間の扉を開け、オープンキッチンへ向かう。

1階のホールは、濃い闇に沈みきっていた。

彼女は勝手知ったる手つきでアイランドカウンターへ行き、ガラスのピッチャーを取ってコップに水を注ぐ。

コップを口元へ運び、ひと口目を飲み下した――その瞬間。

玄関のほうで、電子錠が「ピッ」と不意に鳴った。

新谷卿華の動きがぴたりと止まる。コップを握る指先が、きゅっと強張った。

静まり返った深夜、その小さな音は異様なほど大きく響いた。

続いて、落ち着いているのにどこ...

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