第71章

食卓の空気が、ふっと凍りついた。

立花真淵は、すぐには断らなかった。手元のブラックコーヒーを持ち上げ、ひと口だけ含む。深い眼差しがカップの縁を越え、何気ないふりをして新谷卿華へ向けられた。

――彼は、彼女の反応を待っている。

新谷卿華は一秒たりとも迷わない。

「お婆さま、申し訳ありません」

箸を置き、ナプキンで口元を軽く押さえる。声は淡々として、距離があった。

「来週はスタジオで秋のオートクチュールのショー準備が入っていて、どうしても時間が取れません。お見合いみたいなことは……なしで」

立花真淵の指が、コーヒーカップを握る力を強めた。骨ばった関節が、冷たい青白さを帯びる。

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