第77章

彼女は髪をきりっと高い位置で結び、無防備に金田川浬へ笑いかけていた。

肩の力が抜けた、明るくて、心の底からの笑顔。――そんな表情を、立花真淵はこの三年間、一度も見たことがない。

立花真淵の顔色が、すっと沈む。引き締まった顎のラインが、鋭い一本の直線になった。

胸の奥で嫉妬が雑草みたいに伸びていく。燃え広がって、理性を焼き切る。

離婚だなんだと家中を引っかき回し、青山別荘の鍵まで投げ捨てたくせに。次の瞬間には別の男と、こんな山奥でキャンプだと?

「真淵、空気がすごくおいしいね」

須藤郁夜が反対側から車を降り、彼の隣へ寄ってくる。甘く柔らかな声。

立花真淵は視線を引き戻さないまま、...

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