第86章

彼女は、こんな卑屈な仕事をしてでも、彼に頭を下げて非を認めることだけはしなかった。

「このスケッチブック、私のです」

新谷卿華は彼らの茶番に付き合う気もなく、須藤郁夜の憶測を真っ向から遮った。

「800万。間違いないなら、振り込んでください」

空気が、ぴたりと止まる。

「ぷっ——」

高山峰が吹き出し、指をさして腹を抱えて笑った。

「お前の? 新谷卿華、ホラ吹くにしてももうちょいマシなの考えろよ。立花家に3年いて、やってたのはお手伝いさんみたいにお茶くんだり片づけたりだろ。絵筆なんて握ったことあんのか? 自分のスケッチブック? 金に目がくらんだか!」

須藤郁夜もため息をつき、ス...

ログインして続きを読む