第87章

言い終えると、彼は彼女を振り返りもしないまま、個室の扉へ向かった。

須藤郁夜は新谷卿華をきっと睨みつけ、ハイヒールを鳴らして慌ただしく後を追う。

高山峰も肩をすくめ、ひゅうっと口笛を吹きながら二人の背中についていった。

扉が閉まる。

新谷卿華はその場に立ち尽くした。胸の奥では怒りがまだ渦を巻いているのに、胃のあたりがきりきりと鋭く締めつけられる。

今日は朝から休む間もなく動き回り、夜に口にしたのはブラックコーヒー一杯だけ。低血糖の症状が容赦なく襲ってきた。

追いかけて画集を取り返したい。けれど視界がすっと暗くなり、耳の奥でぶうん、と嫌な音が鳴る。

必死に踏ん張って扉を押し開け、...

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