第88章

看護師が点滴の針を抜き、新谷卿華は退院手続きを済ませた。

初秋の夜風が肌を撫でる。骨の芯まで沁みるような冷たさに肩をすくめ、彼女はタクシーを止めた。行き先は立花グループ本社――迷いはない。

同じ頃、立花グループ本社、最上階の社長室。

立花真淵は黒い革張りのチェアに深く身を沈め、引きちぎるように緩めたネクタイのまま、眉間に濃い陰を落としていた。

スマホを雑にスワイプし、SNSを開く。

更新された画面に、服部ココの投稿が五分前の新着として躍り出た。

写真。

街灯の薄い橙色の下で、服部放川が意識を失った新谷卿華を横抱きにしている。

俯いた横顔。きゅっと結ばれた顎の線。目に浮かぶ焦り...

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