第98章

背筋の伸びた後ろ姿。迷いのない足取り。

古沢正言はその場に立ち尽くし、頬がひりつくのを堪えた。

彼女の決然とした背中を見送った瞬間、胸の奥に言いようのない焦りが湧き上がる。

――あの、いつも自分の一歩後ろを歩いていた。

穏やかで、耐えることに慣れた新谷卿華は。もう、どこにもいない。

宴会場。

新谷卿華が足を踏み入れた途端、空気が目に見えて変わった。

さっきまで談笑していた客たちが、示し合わせたように動きを止め、視線を一斉に入口へ向ける。

ざわ……と、小さな波が人の群れを伝っていく。

「長島愛蘭が来た」

誰かが声を潜めて言った。

新谷卿華の足が、ぴたりと止まる。

心臓が...

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