第4話

青木洋平も池上麻耶も明らかに一瞬呆気にとられた。私がこんなに早く「折れる」とは全く予想していなかったようだ。

青木洋平の顔から怒りは一瞬で消え去り、その代わりに「やっぱりお前は大騒ぎなんてできないだろう」という得意げな表情と支配感が浮かんだ。

彼の口調もすぐに和らぎ、むしろ偽りの優しささえ漂わせていた。

「そうだろう、杏子」

彼は手を伸ばして私の肩を叩こうとしたが、私は無表情でそれを避けた。

彼は気にせず、続けて言った。「君は分別のある女だと思っていたよ」

「安心しろ。君が声明を出して釈明さえすれば、今後誰もこの件を持ち出すことはないことを保証する」

「また以前のように、仲良く暮らしていこう」

池上麻耶も慌てて手の甲で、そもそも存在しない「涙」を拭い、感謝の涙に溢れて晴れやかな笑顔を浮かべた。

「ありがとう、杏子姉さん!本当に優しい!私を責めたりしないって分かっていたわ!」

彼女は親しみを示そうと、私の手を握ろうとさえした。

私は二人のこの極めつけの偽善的な顔を見て、心の中が凍りつき、ただ悪臭が鼻を突くように感じた。

「でもね」私は急に話題を変え、二人の自己満足を遮った。

「グループチャットで声明を出すだけで何の意味もないだろう?口先だけの言葉なんて、誰が信じるの?」

青木洋平は眉をひそめた。「じゃあ、どうしたいんだ?」

私は彼の探るような視線を受け止め、冷笑を浮かべてゆっくりと口を開いた。

「こうしよう。このシェアハウスの住人全員を集めてくれ」

「それに、私を特に『気にかけて』くれている君の親友たちも、一緒に呼んでくれ」

「リビングで、『シェアハウス内部説明会』を開こう」

「みんなの前で、この件の経緯をきちんと『説明』してやるよ」

「どうだ?」

私はわざと「気にかける」と「説明」という二つの言葉を強調し、目にはかすかな挑発の光を宿した。

残念なことに、勝利に浮かれていた青木洋平は、明らかに私の言外の意味に気づいていなかった。

むしろ、この案は最高だと思ったようだ。

皆の前で釈明する。

それこそが、彼の「統率力」と「問題解決能力」を最もよく示すことになる。

そして、誰の口も完全に封じることができる。

彼、青木洋平がどれほど「度量」を持ってこの「誤解」を処理し、この分別のない彼女である私をどれほど「守った」かを、皆に見せつけるのだ。

「よし!それはいい!」

彼はすぐに興奮して太ももを叩き、顔には満面の笑みが溢れていた。

「決まりだ!今すぐ連絡する!今夜!リビングでやるぞ!」

「杏子、その時はちゃんと話してよ。誠実な態度で、もうわがままは言わないで」

彼は待ちきれない様子でスマホを取り出し、興奮気味に電話をかけ始めた。

その口調には、彼自身の能力を証明する「勝利」が目前に迫っているという高揚感が満ちていた。

一方、池上麻耶は従順な若妻のように彼のそばに寄り添い、時折、目尻の端で私をちらりと見ている。

私は、忙しく興奮している二人の姿を冷ややかに見つめ、それ以上一言も発しなかった。

背を向け、黙って自分の部屋に戻った。

「ドン」という音と共に、部屋のドアに鍵をかけた。

外にいるあの吐き気を催すような二人の姿と声を遮断した。

「釈明会」?

青木洋平、池上麻耶。お前たちは本当に、私がお前たちが書いた台本通りに、人前で自ら恥をかくような茶番を演じるほど馬鹿だと思っているのか?

私を公の場で恥をかかせ、皆の笑いものにしてやりたいのか?

それなら、身も名も失うとはどういうことか、思い知らせてやる!

私は窓辺へ歩み寄り、分厚いカーテンを引き、外で次第に明るくなり始める空を眺めた。

予備の携帯電話を取り出し、暗記している番号をダイヤルした。

電話はほぼ即座に出られた。

「もしもし、祐子姉さん」

受話器の向こうから、馴染みで落ち着きのある声が聞こえてきた。

「杏子?どうしたの?何かあったの?声の調子がおかしいわ」

電話の向こうの武藤祐子は、私の叔母の娘で、経験豊富で輝かしい実績を持つベテラン弁護士だ。

私は深く息を吸い込み、昨夜から今に至るまでの出来事を、ありのままに彼女に話した。

写真の流出、青木洋平のボイスメッセージ、彼の言い逃れ、池上麻耶の芝居、グループチャットでの議論、そして私が先ほど提案した「釈明会」のことまで。

電話の向こうは数秒間、沈黙した。

すると、武藤祐子の冷たくて怒りに満ちた声が、隠すことのない怒りを込めて聞こえてきた。

「あのクソ野郎!まったくのクズ!最低な奴だ!」

「それにあの池上麻耶!あいつだってろくな奴じゃない!」

「杏子、怖がらないで。私がいるから」

「この件、絶対にこのまま終わらせるわけにはいかない!」

「今すぐ、すぐに、私の言う通りにして……」

武藤祐子の明快で、プロらしく冷静な指示のもと、私は素早く行動を起こし、一連の証拠を保存した。

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