第110章 お前と勝負してやる

ホテルの正面玄関。黒塗りのマイバッハが駐車場からいきなり飛び出し、ききぃっ、と急ブレーキで彼女の脇に滑り込んだ。

ドアが乱暴に開くなり、国分礼二が目を血走らせて飛び降りる。橘彩花の存在など視界に入っていない。まっすぐ玄関前に停められたピンクのポルシェへ駆け寄った。

「夏目凛!」

喉を裂くように叫び、ドアノブに手をかける。だが車内は空っぽだった。

礼二は勢いよく振り返り、人混みを獣みたいに探る。やがて視線が、保温ポットを提げた橘彩花に突き刺さった。

「夏目凛はどこだ。どこにいる!」

大股で詰め寄る礼二に、彩花は痛みに眉をひそめ、掴まれた腕を容赦なく振り払う。鼻で笑った。

「国分社...

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