第113章 悪意がある!

夏目凛が自分のデスクに戻ったばかりだった。椅子に腰を落ち着ける間もなく、周囲の同僚たちの探るような視線が、ちらちらと彼女へ流れてくる。

「凛さ、あの橘社長と……知り合いなの?」

隣の席の女性社員が噂話を抑えきれず、身を寄せて小声で聞いた。

「知らない」

夏目凛は淡々と返し、PCを立ち上げる。仕事を始める気満々、という顔。

――なのに、それが逆効果だった。

知らない? 知らない相手を、あんな大勢の前で名指ししてからかうか? 誰が信じるんだ。

凛は説明する気にもなれない。デザインソフトを開いたものの、頭の中はぐちゃぐちゃだった。

橘徹という男は、本当に意味が分からない。

会った...

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