第144章 何年も俺を騙していた

一触即発になりかけた、そのとき。

鳴瀬優真がふいに声を上げた。

「皆さん、少し」

全員の視線が、そちらへ吸い寄せられる。

彼はエレベーターの扉が閉まったあとの廊下に立っていた。乗り込まずに踵を返し、まだ散りきっていない社員たちへ正面から向き直る。

「本日の件は私的なトラブルであり、会社業務とは無関係です。夏目リーダーの私生活に関する話題がオフィスフロアで出回ることは、望みません。もし確認した場合、会社の機密保持契約書第七条に基づき対処します」

声を荒らげたわけではない。けれど、その場にいる誰もが、言葉の重さを聞き取った。

言い終えると、鳴瀬優真は背を向け、社長専用エレベーターへ...

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