第146章 どんな男も数分しかない

夏目凛と高坂修治は左側に座り、国分礼二は弁護士五人を引き連れて右側へ陣取っていた。机の上には書類が山のように積まれ、半分近くを占領している。

夏目凛は法廷に入ってから今まで、国分礼二を一度も見ていない。

一度も。

被告席の国分礼二は、視線だけは彼女に貼りついたままだった。まるで、その姿を瞳の奥に刻み込もうとするみたいに。

凛は黒いスーツを着ている。

――彼女は昔、黒は着なかった。重たくて息が詰まる、と言って。

「原告側、請求の趣旨を述べてください」

裁判官が告げる。

高坂修治が立ち上がり、書類を開いた。

「原告・夏目凛は、被告・国分礼二との婚姻関係の解消を求めます。理由は以...

ログインして続きを読む