第153章 クズ男

電話の向こうで、高坂修治が黙り込んだ。

その沈黙は、さっきまでのどれよりも長い。

夏目凛は待つ。

急ぐ理由なんてない。

「……俺が徹に頼んだわけじゃない」ようやく高坂修治が口を開いた。さっきより、声の勢いが一段落ちている。

「高坂弁護士」夏目凛が遮る。声は強くない。けれど、それだけで高坂修治は続きの言葉を飲み込んだ。

「さっき言ったでしょう。橘徹という人は、自尊心が高くて、面倒くさくて、絶対に折れない。じゃあ聞くけど、人のことを自分から気にかけたりしない人が、理由もなく橘グループの人脈を総動員して、丸一日使って、『親しくない』女の離婚の証拠集めをする?」

高坂修治が口を開きかけ...

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