第164章 彼女が贈ったもの

電話は切れた。

夏目凛は画面に浮かぶ「通話終了」の文字を見つめ、指先で机を軽く二度、こつこつと叩いた。

橘徹が最後に吐いたひと言が、胸の奥――自分でも認めたくない場所に、棘みたいに刺さっている。

「お前、あいつが飯目当てだと思ってんの?」

答えなかった。

だって、橘徹が何を狙っているのか分からない。

知りたくもない。

夏目凛はスマホをロックし、机の隅へ押しやる。目を閉じ、椅子の背にもたれた。

三秒。

目を開けると、ペンを取り、付箋に一行だけ書く。

「カフスは彩花に預ける。ご飯は作らない」

一瞬、手が止まる。次の瞬間、「ご飯は作らない」をぐしゃりと線で消した。

そして、...

ログインして続きを読む