第167章 なぜお前が国分を名乗るんだ

橘徹は、画面に何度も現れては消える「相手が入力中……」の表示を見つめたまま、口元をゆっくり吊り上げた。

五回目だ。

夏目凛の様子が目に浮かぶ。デスクに腰かけ、眉間にうっすら皺を寄せ、親指をキーボードの上で宙に止めたまま――打っては消し、消しては打つ。

ただの雑談だろ。契約書でも作ってるつもりか。

堪えきれず、笑みがもう少し深くなる。

そのとき、オフィスのドアがコンコンと二度叩かれた。

「橘社長、お昼です」

秘書が弁当箱を載せたトレーを持って入ってくる。顔を上げた瞬間、ぴたりと固まった。

橘徹は椅子の背にもたれ、机の上にスマホを立てて置き、笑っている――?

社交辞令の薄い弧じ...

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