第168章 裏表がある

それから国分礼二は、口の端に嘲りを薄く貼りつけたまま何も言わず、くるりと踵を返して社長室へ入った。背後でドアが乱暴に閉まる。

バン。

廊下が、しんと静まり返った。

国分栄太はその場に立ち尽くし、視線だけが床に散った茶葉に落ちたままだった。

西村が社長室の脇扉から半身だけ覗かせる。廊下の惨状を一瞥し、それから国分栄太を見た。

同情はしない。

国分栄太が何者で、どんな出自か――社内で一日じゅう噂になっていた。国分剛正の外にいる隠し子。国分家の大奥様が存命だった頃、決して屋敷に入れさせなかった「例の子」。

要するに、いつ爆発してもおかしくない地雷だ。

とはいえ西村も、余計な火種は抱...

ログインして続きを読む