第177章 独りよがり

国分家本家、書斎。

老執事が三つの箱を本棚脇の飾り台にきっちり並べ、下がろうとしたところで、背後から国分浩義の声が飛んだ。

「その黒翡翠は、蔵に入れとけ」

老執事の手が止まり、振り返る。

「飾られないので?」

「飾ってどうする」国分浩義は椅子の背にもたれ、まぶたを半分落としたまま言う。「石ころ一つじゃ、何も見えん。人間なら、見ようがあるがな」

一拍、間を置いて。

「お前は、あの子をどう見た」

老執事は黒翡翠の箱を抱え直し、言葉を選ぶように数秒沈黙してから口を開く。

「恭しく、立ち居振る舞いも申し分ございません。口数は多すぎず少なすぎず、進退も弁えておりました。三回のお辞儀も...

ログインして続きを読む