第27章 義務

国分礼二が名取心美を連れて別荘へ戻った頃には、空はもう薄墨色に沈みかけていた。

ドアを押し開けた瞬間、濃い食事の匂いがふわりと鼻腔を満たす。

この女、騒ぐだけ騒いでも――やるべきことはやるらしい。

靴を脱ぎ、礼二はそのままキッチンへ向かった。

キッチンでは国分凛がエプロンを結び、背を向けたまま鍋の中のスペアリブの煮汁を丁寧に詰めている。

礼二は背後まで近づくと、凛が気づかない隙に手を伸ばし、出来たてで湯気の立つ肉を一切れつまみ上げ、そのまま口へ運ぼうとした。

「熱い」

振り向きもせず、凛が冷たく一言だけ落とす。

礼二の手が空中で止まる。

だが、聞く耳はない。

彼はその熱々...

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