第29章 誰にこんなことをさせられた?

名取心美は「離婚協議書」の文字を目にした瞬間、頭の中が真っ白になった。

聞き間違い……?

国分凛が、なんて言った?

離婚――?

喉から手が出るほど欲しかったものが、こんなにもあっさりと、国分凛の手から差し出されるなんて。

信じられない。

信じてたまるか。国分凛が、そんなに簡単に手放すわけがない。これはきっと新手の罠。突き放しておいて、引き寄せる――その手口だ。

「……あんた、いったい何を企んでるの?」

心美の声は、震えを抑えきれなかった。

国分凛は、疑いと怯えが入り混じったその顔を見て、ふっと可笑しくなる。

椅子をそっと引き、立ち上がる。

「信じるかどうかは、好きにして...

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