第32章 頭がおかしい

別荘へ戻るなり、国分礼二は靴も脱がず、手の中のベルベットケースをきつく握り締めたまま二階へ駆け上がった。

今すぐ夏目凛の顔が見たかった。

驚け。呆然としろ。一本のネックレスごときにねちねち言い募っていた自分が、この九千万という絶対的な価値の前で、どれほど滑稽でちっぽけか思い知れ――そういう顔を。

ドン、ドン、ドン!

返事はない。

この女……またこの手か。

礼二の我慢は限界だった。ポケットから合鍵を探り当て、鍵穴へ差し込み、力任せにひねる。

カチャリ、と乾いた音。扉が開く。

凛は机の前に座り、背中を向けたまま何かを片づけているようだった。

胸の奥で火が噴き上がる。

礼二は大...

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