第33章 昏睡したまま目覚めない

夜はじわじわと更けていった。

名取心美は夜更けまでじっと待ち、二階の主寝室から物音が一切しなくなったのを確かめる。国分礼二は、もう熟睡しているはずだ。

彼女は裸足のまま、幽霊みたいに音もなくキッチンへ滑り込んだ。

ガスコンロの前に立ち、上品に整えたマニキュアの指先で、つまみのひとつを――ほんの少しだけ回す。

全開にする必要はない。音が大きすぎるし、匂いもすぐ広がってしまう。

ほんの、髪の毛一本分の隙間。わずかなわずかな開き。

「シュー……」

ほとんど聞き取れない程度のガス漏れの音が、静まり返ったキッチンに溶けた。

それで十分。

心美は満ち足りた笑みを浮かべると、来たときと同...

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