第58章 あの背中

「社員食堂、混んでるし……外で食べない? 近くに新しく中華の店ができたんだ。味、悪くないよ」

鳴瀬優真の目尻に、ほんのわずかな疲れと諦めが滲んだ。自分からそう切り出してくるあたり、気を遣ってくれているのが分かる。

「うん。先輩に任せます」

二人は肩を並べて社長室を出た。背後では、ひそひそとした声がいつまでも収まらない。

……

中華料理店。

落ち着いた店内に、ゆるやかな音楽が流れている。

夏目凛と鳴瀬優真は向かい合って座ったまま、妙に静かな時間を挟んでいた。

――先輩は知っている。自分がこの三年、まともに笑えていなかったことを。

だけど、聞けないのだろう。

聞いてしまえば、...

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