第67章 猶予期間

「……何を言ってる?」

名取心美のために生きるだの死ぬだの言って、祖父にまで楯突いたあの孫が――いまさら、夏目凛を取り戻すだと?

「言っただろ。凛を、取り戻す」

「離婚協議書は名取心美の罠だ。俺を騙してサインさせたんだ。あれが何の書類か、俺は知らなかった。あんなの、無効だろ!」

「じいちゃん、俺は凛が好きなんだ。凛がいないと駄目なんだ。俺は……俺が最低だった。大事にするってことが分かってなかった。頼む、力を貸してくれ。あの協議書、取り下げさせてくれ。な?」

強引一辺倒だった祖父に、こんなにも卑屈な声で縋ったのは初めてだった。

受話器の向こうが、長い沈黙に沈む。

国分礼二に聞こえ...

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