第73章 お前は狂ったのか!

「凛……」

喉の奥を削るようにしゃがれた声。ヤニと酒の匂いが濃くまとわりつき、徹夜の疲れがそのまま滲んでいた。

国分礼二だ。

その名を認識した瞬間、夏目凛の心臓は喉元まで跳ね上がり、今にも飛び出しそうになる。

反射的に身をよじって逃れようとする。だが手首を掴む指はさらに食い込み、骨ごと握り潰されるかと思うほどだった。

「放して!」

声を抑え、怒りを噛み殺して吐き捨てる。

「放すか!」

礼二は凛の手首を万力みたいに固定したまま、空いた手を伸ばして肩を掴み、支柱と自分の胸のあいだへ押し込んだ。逃げ場はない。息が詰まる。

凛は歯を食いしばり、足を振り上げる。全身の力を乗せて、彼の...

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