第74章 彼はそもそもふさわしくない

礼二は手を緩めるどころか、ぐいっと力を込めた。まだ暴れる夏目凛を、乱暴に助手席へ押し込む。

バン——!

ドアを叩きつけるように閉め、間髪入れずにセンターロック。

一連の動きは淀みなく、速すぎて反応する暇すらなかった。

「国分礼二!」

鳴瀬優真の顔から温和さが消え、残ったのは驚愕と怒りだけ。彼は一歩で距離を詰め、ドアに手をかける。

「それ、誘拐だぞ! 犯罪だ!」

国分礼二が振り返る。赤く充血した目が、完全に怒り狂った獣みたいに優真を捉え、離さない。

自分の妻が、目の前で、ほかの男に助けを求めた。

そんな屈辱——この先の人生で、耐えられるはずがない。

「……俺の妻に、口出しす...

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