第81章 お前は一生俺を振り切れない

国分礼二は、自分がどうやって会社を出たのか覚えていなかった。

本家へは戻らず、なぜか――まるで何かに操られるように、車のハンドルを切っていた。

向かったのは、かつて夏目凛と「家」と呼んだ場所。

昔は鼻で笑っていたのに、今となっては、そこにしか行きたくないと思ってしまうマンション。

車を停めたまま、しばらく動けなかった。ようやく重たい足を引きずるようにして、建物の中へ入る。

エレベーターの扉が開く。

薄暗い廊下。自分の部屋の前に、細い影がうずくまっていた。礼二の姿を見た瞬間、その影はばっと立ち上がり、泣き声を噛み殺しながら飛びついてくる。

「礼二! やっと帰ってきた!」

名取心...

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