第90章 それなら法廷で会おう

夏目凛は、誰もいない自分のデスクへ戻ると、マグカップを掴んで冷たい水を喉へ流し込んだ。ごく、ごく、と乱暴に飲み下す。氷みたいな液体が食道を滑り落ちていって、ようやく胸の奥で燃えていた熱が、少しだけ引いた。

国分礼二……。

どうして、あんな真似ができる。

どうして、そこまで卑劣になれる。

あんなやり方で、彼女を「国分家の奥様」という吐き気のする札に縫い付けて、会社中の笑いものにして。これまでの努力も、必死の説明も、全部――最初から最後まで茶番に変えてしまうなんて。

机の上でスマホがぶるぶると震えた。

表示は「先輩」。

夏目凛は深く息を吸い、通話ボタンを押す。

「凛、大丈夫か? ...

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