第95章 ろくな奴がいない!

「この偽善者め……!」

義理だの仁義だの、口ではきれいごとを並べて――結局は足元を見て、ふっかけたいだけじゃないか。

それに、俺の電話を切りやがった。

国分礼二の脳裏に、橘彩花の傲慢で生意気な顔がよぎる。続いて浮かんだのは、橘徹のいかにも品行方正ぶった薄ら笑い。瞬間、腹の底から黒い火が噴き上がり、頭のてっぺんまで突き抜けた。

あの兄妹、ろくなもんじゃない。

礼二は荒い息のままエンジンをかけ、車を発進させた。

だが、数分も走らないうちに――ぎゅっとブレーキを踏み込む。

……どこへ行く?

彼女がどこにいるのか、分からない。

世界はこんなに広いのに、たった一人が見つからない。

...

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