第98章 ひざまずいて私に頼め

橘彩花は頭をフル回転させ、すぐさま口実をひねり出した。

「……兄が来たの。私とケンカして、勝手に押し入ろうとしてて」

そう言いながらも、まだ不安が拭えない。彩花は自分のバッグを掴むと、足早に玄関へ向かった。

「ちょっと下に行ってくる。すぐ戻るから。いい? どんな物音がしても、絶対にドア開けないで」

言い終えるや否や、彼女はドアを引き開け、振り返りもせずに飛び出していった。

……

マンションのエントランス前は、すでに騒然としていた。

国分礼二が、屈強な警備員三、四人に取り囲まれている。高級スーツは揉み合いでくしゃくしゃ、髪も乱れ、見る影もないほどみじめだった。

パトカーの赤色灯...

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