第3章

「その汚い手を、私の伴侶から離しなさい!」

 アーサーが高みから私を見下ろし、憎々しげに目を細めた。

 反応する間もなく、またしても凶暴で目に見えない力が腹へ叩きつけられる。

 私は血の塊を吐き出し、咳き込んだ。

 顔を上げると、さらに上から父が私を見下ろしていた。

 その顔には露骨な嫌悪が浮かんでいる。至高の星竜は、本気でこの二匹の雑種が、自分の権勢を固めるための完璧な「光」の子を産めると信じているらしい。

 血に濡れた唇に、刃のように鋭い笑みが咲いた。

「では、完璧な光の血の後継ぎを授かれるよう、お祈りしてあげるわ!」

 あいつらに、光の血を引く竜の子など生まれるはずがない。

 セレナは所詮、下級の灰。アーサーの核は完全に空洞だった。

 奴は盗んだ魔力に縋って、あの眩い見せかけを保っているにすぎない。

 互いの未来を互いに賭けるなんて、行き着く先は歪んだ怪物だ。

 セレナ、前世で私が味わった苦痛を、あなたはゆっくり噛みしめればいい。

 竜族全体が私に向けて嘲笑と嘲りを浴びせた。

「おまえの血筋は穢れすぎている! 竜神の怒りを買ったら、俺たちが手ずから殺してやる!」と叫び立てる。

 一か月後、私は竜の深淵へと護送された。漆黒で、底の見えない荒れ地――死の谷だ。

 生贄の護送は、聖域の騎士十名と司祭一名。

 司祭は苛立たしげに小声で呪い、地面へ浄化のルーンを描いていく。「円の中に入って待て。竜神が降臨なさる。もし神が生贄としておまえを拒めば、こちらで崖から蹴り落としてやる」

 そのとき、濃い灰色の霧の向こうから男が現れた。

 ぼろ布の外套をまとい、右袖はだらりと空のまま垂れている。こけた頬の上、汚れた布切れが目をきつく塞いでいた――目隠しだ。

「失せろ、この汚い乞食が!」騎士が怒鳴り、鞭を振り下ろす。

 盲目の男は避けるために手を上げもしない。ただ重心をわずかに移しただけだった。

 私は息を呑む。攻撃をかわしただけではない。地面の二つの魔法ルーン、その微細な隙間へ、まるで測ったように足を踏み入れたのだ。

 片腕を失い、目も見えないはずなのに、足音は一切しない。まとわりつく気配は重く圧し掛かり、深海のように息苦しい。

 激しい突風が襲い、視界が闇に沈む。砂塵が収まったとき、男の姿は消えていた。

 夜になり、護衛たちは寒さを避けるため峡谷の上の天幕へ退いた。私は生贄の輪の中に縛り上げられたまま、置き去りにされる。

 護衛の足音が遠ざかった瞬間、私は輪の外へ踏み出した。

 淡く、冷え冷えとした匂いを辿り、闇の奥へと進む。

「誰かを探しているのか?」

 囁きは前方からではない。直接、耳の奥へ滑り込み、顎骨を震わせた。

 振り向いた、その刹那。巨大な影が私を丸ごと呑み込む。

 短剣を抜くことすらできぬうちに、古の竜語の低い、轟くような一句が耳元で震えた。

 そして私は意識を失った。

 再び目を覚ましたとき、全身が裂けるように痛んだ。骨を一度ばらして、乱暴に縫い合わせられたかのように。

 野営地は完全に空だった。騎士も司祭も、跡形もなく消えている。

 額の皮膚の下で、異界めいた灼ける感覚が脈打っていた。

 額に触れると、盛り上がった縁が指に当たる。烙印だ。

 私は背を向け、帰路についた。

 深淵から生きて戻った生贄など、かつて存在しない。

 私の帰還は一族を恐慌へ叩き落とした。

 彼らにとって私の存在は奇跡ではない。致命の呪いだった。

「何が起きたのか、私にも分からない」怒り狂う騎士たちに囲まれながら、私は言った。「目覚めたら、みんないなくなっていた。逃げたわけじゃない」

 だが、そんな弁明は何の役にも立たない。

「この家にもたらした屈辱が分かるか!」父が咆哮した。

 その隣で、セレナ――妊娠した腹がかすかに丸みを帯び始めている――は夫の腕に身を寄せ、勝ち誇った視線で私を見た。

「あなたが神を怒らせたのよ! 災厄を呼ぶ! 父上、彼女は粛清すべきです!」

 激怒する竜神を宥めるため、父は骨削りの陣の起動を命じた。骨髄から直接、魔力を剥ぎ取るつもりだ。

 私は身を丸め、肉を裂かれる地獄の痛みに備えた。

 だが、予想していた苦痛は来ない。

 眩しく灼ける紫の光が額から噴き上がり、陣の魔力を丸ごと喰らい尽くした。

 セレナの顔が恐怖で青ざめる。

「妖術よ! あの子が私の赤子に呪いをかける前に殺して!」

「異端者を処刑しろ!」アーサーが叫び、大剣を掲げて突進する。

「下がれ!」

 大司祭が圧し潰すような威圧で暴動をねじ伏せ、冷ややかに宣言した。

「ただ彼女の卑しい灰の血が竜神の不興を買っただけだ。神は彼女を、そのまま吐き戻されたにすぎぬ」

 その言葉は私を永遠に恥辱の柱へ釘付けにした。だが同時に、死刑を一時停止するための口実にもなった。

 大司祭は部下に命じ、呪いの有無を試す聖液――「血炎」を一滴、私の手首へ落とさせた。

 しかし燃え盛る炎は灰にならない。代わりに、不気味なほど滑らかに私の血管へ染み込んでいった。

 三秒の死の沈黙のあと、鈍く重い脈動が体内から響いた。至高の圧力を伴う、押し潰すような鼓動。

 大司祭の顔が絶対的な恐怖に歪む。震える指が私の腹をまっすぐ指し示した。

「これは……新たな命の、竜息の残響……。おまえ……おまえは、身ごもっている!」

前のチャプター
次のチャプター