第百十章

「雪見秘書、一体どうしたの?」梨乃は千枝を脇へ引き寄せ、声を潜めた。「どこか具合でも悪いの?」

今朝見かけたとき、悠はあんなにも上機嫌だったというのに。

千枝は見るからに華奢で小柄だ。もしかして昨日、二人が激しすぎて体調を崩してしまったのだろうか。

千枝が大学時代にプラトニックな恋愛しかしていなかったことや、悠が長年恋愛から遠ざかっていたことを思えば、間違いなく羽目を外しすぎたに違いない。

「よかったら私が付き添って……」さらに問い詰めようとした矢先、千枝は逃げるように薬局の方向へ足早に歩き出した。「大丈夫です。九条社長の胃薬が切れてしまったので、少し買ってきます」

「雪見秘書!」...

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