第百十一章

スマホが絶え間なく震えている。悠からの着信だと確認すると、彼女は困惑したように目を逸らし、気づかないふりをした。

雪花は優秀だし、会社には梨乃も控えている。自分のような役立たずがいなくても、仕事に支障は出ないはずだ。

千枝は鼻をすすり、ようやく車を降りた。

そのまま病院の受付窓口へ向かう。

「何科を受診されますか」

受付のスタッフが尋ねてきた。

千枝は気まずさを覚えながらも、思い切って口を開いた。

「中絶は、産婦人科でいいんでしょうか」

相手は少し軽蔑するような目で彼女を値踏みし、キーボードをカタカタと叩いた。

「ええ。ですが、中絶手術にはご家族の付き添いが必要です。ご家族...

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