第百十五章

普段は温厚で物静かな雪見武治だが、今は片足で立ち、松葉杖を石川紅に突きつけていた。

奈央は夫を支えながら、険しい目で紅を睨みつけた。

「あなたが和也くんのお母様ですね? 息子さんがあんな真似をした以上、大人として自分の行動に責任を取るべきです」

「うちの息子が何の責任を取るって言うのよ! あの二人は付き合ってるの! 数日前にも、結婚するってそっちに電話したじゃない!」

紅は開き直ったように喚き散らした。

「結婚する仲なのに、何が強姦未遂よ!」

「お父さん、お母さん!」

両親の姿を見た瞬間、千枝はこみ上げる悔しさに耐えきれず、ふいに目頭を熱くした。

武治が手を伸ばすと、彼女はす...

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