第50章

千枝は悠の後ろをついて歩きながら、息を潜めていた。

先ほど会議室で口にした言葉が適切だったのか、まったく自信がない。何しろ自分はただの秘書であり、しかもまだ本採用すらされていない身なのだ。

ドンッ!

悠が唐突に足を止めたため、千枝は避けきれずにその背中へ激突した。

鼻の奥がツンと痛み、反射的に涙がこぼれ落ちる。

振り返った悠は、彼女が涙ぐんでいる可哀想な姿を見て、ふっと目元を和らげた。

「もう大丈夫だ。怖がるな、俺がいる」

「怖がってなんかいません」

千枝は鼻の頭をこすった。

「あなたが急に止まるから、鼻をぶつけたんです」

悠は一瞬きょとんとし、やがて呆れたように笑みをこ...

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