第73章

「私、もう帰るから。じゃあね!」

千枝はきびすを返し、由衣の叫び声を完全に無視して歩き出した。

自分がどこに住んでいるかなんて、由衣に教えるわけがない。会社の同僚と接触する機会を与えるなんてもってのほかだ。

由衣も和也も同じ穴の狢だ。もし彼女がこのプロジェクトの責任者だと知れたら、絶対に邪魔をしてくるに決まっている。

角を曲がろうと走り出した途端、ぐいっと腕を引かれ、危うく転びそうになった。

「焦らなくていい」

悠が彼女の身体を支える。

「戻って残業する必要はない」

彼だと気づいて千枝はホッと息を吐いたが、すぐにまた彼の手を引いて出口へと走り出した。

「九条社長、どうして中...

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