第82章

空から細かい雨が落ちてきたかと思うと、次第に雨脚は強くなっていった。悠は仕方なく、一番近い場所にある自分の別荘へ千枝を連れ帰ることにした。

悠がどれだけ気を配っても、千枝はすっかり濡れてしまっていた。

彼女を抱きかかえてバスルームへ入ると、千枝は無意識に彼を押し退けようとした。

「誰? 何する気?」

悠は濡れて顔に張り付いた彼女の髪をそっと直してやる。

「千枝、俺が誰だかちゃんと見ろ」

千枝はぼんやりと顔を上げ、自分の服の匂いを嗅いだ。

「……臭い」

「風呂に入れ」

悠がバスタブにお湯を張り、振り返ったときには、千枝はすでにのろのろと服を脱ぎ始めていた。

彼は慌てて目を逸...

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