第87章

 千枝は自分がどうかしてしまったのだと思った。ウォークインクローゼットの中で悠と体を重ねてからすでに二時間が経つというのに、彼が止まる気配は一向にない。

 千枝は彼の胸を軽く叩いた。

「悠、もう……やめて!」

「ああ、分かった」

 悠は彼女の手を握って何度も口づけを落としながらも、腰の動きを止めることはなかった。

 押し寄せる快感の波に抗えきれず、千枝はとうとう全身の力を抜いて悠の体にすがりついた。

 意識が遠のきかけ、今の状況がうまく掴めない。

 なぜ自分はまた悠と寝ているのだろうか。しかも、こんなクローゼットの中で。

 視界の端に、鏡に映る二人の裸体が入り込み、千枝は慌て...

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