第508章 冥府の花

曇城。

古びたアパート。

原田麻友はそのアパートの前で足を止め、まだ中へ入らないうちから、奥で子どもたちの弾む笑い声がしているのを耳にした。

しばらく外に立ち尽くしてから、鉄の門をコンコンと叩く。

ずしりと重い音。院内のはしゃいだ空気が、その一打でぷつりと途切れた。

少し間を置いて、ぱたぱたと小走りの足音が近づく。

きい、と耳障りな軋みを立てて門が引かれ、隙間から小さな頭が覗いた。

岩崎心菜だ。

門の前に立つのが原田麻友だと確認すると、さらにその横へ目をやり――誰もいないと分かった途端、ようやく門を大きく開けた。

原田麻友が中へ入る。

岩崎心菜は頬を膨らませたまま、大きな...

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