第520章 中川泰が動いた

原田日菜がまだ呆然としている間に、原田渉はもう立ち上がっていた。彼はそのままスーツケースを受け取り、淡々と言う。

「行こう。送る」

原田美紀子も立ち上がる。

歩き出そうとしたところで、原田渉が続けた。

「父さんも母さんも、見送りはいい。俺が日菜を送っていく。ついでに、向こうで足りないものがないか見てくる」

「……ええ」

原田美紀子はそう答えると、今度は原田日菜へ視線を向けた。

「日菜、住みにくかったらお母さんに言いなさいね。……別のところ、探してあげるから」

いったん光を宿した日菜の瞳が、またすうっと翳った。俯いたまま、原田渉の背中を一歩ずつ、ゆっくり追いかけていく。原田家の...

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