第54章 目の前にある

扉を開けると、人の良さそうな中年男性が立っており、実直そうに笑みを浮かべた。「松本オーナー、お宅の事情を聞きましてな。わざわざ道観に行って、占ってもらったんですよ」

「そこの先生が言うには、私と松本オーナーの生年月日の占いの相性が良いそうで。きっと松本オーナーの先祖様のご遺骨を見つける手助けができるはずだと」

そう言って、彼は人の好い笑みを松本由紀に向けた。

もし事前に原田麻友の言葉がなければ、松本由紀は彼の話を間違いなく信じていただろう。

何しろ、二人は幼い頃から共に育ち、同じ村の出身なのだから。

それに今回、井上由夏から電話がなければ、実家の先祖代々の墓が暴かれ、遺骨がなくなっ...

ログインして続きを読む