第64章 教科書の人物

森田大介は弟子への指導を終えると、再び原田家の人々へ挨拶に向かった。

特に原田麻友へ自己紹介をする。「私は青雲観の観主、森田大介。道号は青陽と申します」

「青雲観!」原田美紀子が驚きの声を上げた。「青雲観の縁結びの神様は、とても霊験あらたかだと伺っておりますわ。以前、渉を連れてお参りに行こうと思っていたのです」

原田渉は「……」と無言だった。

原田日菜は皆がすっかり物の怪のことを忘れているのを見て、慌てて注意を促した。「青陽道長、家に幽霊がいるんです。どうか除霊してください! 怖いんです!」

青陽は原田日菜にちらりと目をやり、それから原田麻友に視線を移すと、首を横に振った。「あのお...

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