第640章 美容の札

久保田真美は田川大輝の目配せを無視し、ブランドバッグを振り回しながらリンカーンへと大股で歩み寄ると、車体を足で蹴りつけた。

「へえ! 男を誘惑する度胸はあるくせに、出てくる顔はないってわけ?」

「おい、ふざけんな!」と田川大輝が声を荒らげる。

「その泥棒猫を庇うのはやめてよね! 言っておくけど田川大輝、婚約者の私がいないと、あんたがすんなり田川家を継げると思ってるの?」

「さっさと出てきなさいよ!」

久保田真美の怒声が響く中、車内から透き通るように白い手がスッと伸びた。

周囲が一瞬静まり返り、誰もが好奇の目でその手の持ち主を見つめる。

無地のロングドレスが車内からふわりと現れ、...

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